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年賀状を書く男

不義理も失礼も承知で、基本的に年賀状は書かない主義を通している。

 

きっかけは若い頃に読んだ、やはり書かない主義であった團伊玖磨さんのエッセイに大変共感したからなんだけど、もはやその内容は憶えていない。

 

要するに良い言い訳を見つけただけなのだ。

 

しかし、家庭の平和のために、大阪に住む義父への年賀状一枚だけは必ず書かされている。

 

という訳で、毎年当たり障りのない感じで書いているのだが、どうやら元祖天才キンツマのパパが、ぼくの年賀状だけ皆の前で大きな声で読み上げるらしい。家族の一員であるのにその場にいない私を気遣ってのことだと思うのだが、それだけに

「テキトー過ぎる年賀状でとても恥ずかしいから、ちゃんと書くように!」

とキンツマは何度も念を押して帰省した。

 

家族の和も大事だし、新年早々キンツマを怒らせるのも得策ではないので、皆の前で読み上げられることを考えて、めちゃくちゃ頑張って書いてみた。

 

「あのメリークリスマスから早一週間、お正月になりました。お義父さん、お義母さん、○さん(※義弟)、○○さん(※義弟の嫁)、○○ちゃん(※姪っこ)、美和ちゃん(※キンツマ)、そして大勢お集まりの枚方市民の皆様、明けましておめでとうございます。

わたしがいる埼玉県は現在12月30日です。そちらではもう紅白歌合戦も終わったことでしょう。楽しみが減るのでどちらが勝ったか結果は知らせないでください。お願いいたします。時が経つのは早いもので、美和ちゃんが大阪に旅立ってから、もう3日も経ちました。元気で過ごしていますか?もうそちらでも友達は出来たかな?

美和ちゃんが住んでいた頃とは東京も埼玉もすっかり変わってしまいました。大人たちは姿を見せず子供たちは学校にも行かず昼間からブラブラしています。数少ない大人たちは、彼らを見ても注意もしません。ぼくは一人寂しく留守番をしていますが、一人では食欲もなく、一日に三度しかご飯がのどを通らないほどです。夜もせいぜい8時間ぐらいしか眠れません。心配で病院に行きましたが、先生は「バカにつける薬はない」と言いました。「それでは飲み薬で結構です」と言ったら「忙しいから帰れ」と言われました。もしかしたら不治の病かもしれません。(来年の年賀状に続く)」

 

書き終えてすぐに

 

「頑張ってちゃんと書いた」

 

とキンツマにメールで報告した。

 

「ありがとう💗お父さんも喜ぶと思うわ!」

 

と返事が来たので、それはどうかなぁと思ったが、もう送ってしまった。

新年早々家族会議で裁きを受けるかもしれない…