日曜日の朝、いつものようにわたしはGG学院でのレッスンの為に有楽町線に乗り換えようとJR池袋南口を出たのだが、そこで力なく佇む白人の青年を見つけて声をかけた。「へ~い、Youは何しに日本へ?」彼は力なく「わたしは記憶をなくしてるようデス・・・自分の名前も思い出せないのデス。Mr.イクタと名乗る怪しい男にここに連れてこられて決してここから動かないように指示されまマ~シタ。それにしても一緒にいたMr.クマガイと名乗る男の目つきは本当に怖かったデス」そして彼はわたしにこう言った。「あなたはキャマクラ、もしくはキャバクラに行ったことがありマ~スカ?」「キャマクラ??あ~鎌倉のことか。あるけど・・・」 「わ、わたしをそこに連れて行ってクダサ~イ!何か思い出すかもしれマセ~ン!」仕方がないので担当のMiss.イナバに連絡をして今日のレッスンは延期にしてもらい、私たちは鎌倉へ向かった。鎌倉へ向かう湘南新宿ラインの中でわたしは彼の右手の爪が長く、綺麗に手入れされていることを発見した。「もしかしたらYouはクラシックギターを弾くの?」「わかりマセン・・・」「まぁいいや、君のことはとりあえずギターマンと呼ぶことにしよう。いいかい?」「ギターマン・・・わかりマ~シタ」 こうして私たちの旅は始まったのであった。
鎌倉大仏殿高徳院に着いた。ギターマンは写真を撮られることを好まない。ポーズを取らせると横を向いてしまう。きっと心の闇が深いのであろう。
大仏に圧倒されるギターマン。力のなかった彼の目に初めて生命力が戻ってきた瞬間だ。
素晴らしいデス・・・
おい、ギターマン!大仏の中に入ってみよう。なにか思い出すかもしれないぞ。彼は若干恐れながらも大仏の中に入っていった。
中はこうなっているのデスカ・・・
おお、この神々しい光!これはなんだか懐かしい気持ちになりマス!なにか思い出せそうな気がしマース!
・・・勘違いデシタ・・・
なにかを思い出しかけたギターマン。しかし決定的な手がかりまではつかめなかったようだ。
ここからの眺めが最高デス。しかし、ワタシの記憶は戻るのでショウカ・・・。
悲しみに暮れるギターマンであった。
記憶が戻りますヨ~ニ・・・
「ギターマン!笑顔だ!無理やりでも笑うんだ!笑うコーナーには福が来ると日本では言うんだぜ!」「こ、こうデスカ??」ギターマンの笑顔を初めて見た。
大仏殿をあとにして、せっかくだから、ここの名物のしらすを食べて元気をだそうと奮発して海鮮丼ぶり(上)をご馳走してやった。生しらすもトッピング。
ギターマンも嬉しそうで自然な笑顔がやっと出た。
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