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宮崎発ヒューマンドラマ「サラダ巻き記念日」

14時頃に宮崎空港に到着。

宮崎駅行きのバスは23分発、ここで私の頭脳はフル回転し、綿密なスケジュールを組み立てる。

 

定宿であるアリストンホテルの最寄りバス停は「橘通り二丁目」だがあえて一つ先の「橘通り三丁目」まで切符を購入。到着予想時間を計算するとホテルのチェックインには少し早いと判断したのだ。

 

バス停を降りると目の前にある馴染みの「きっちょううどん」で腹ごしらえをしてからチェックイン、という我ながらまったく無駄のない計画だ。

 

予想通りバスは15時10分前に到着、食べ終わると15時を5分ほど回ったところ。全くちょうど良い。

仮に、実は昨年に引き続きわたしが単に到着バス停を間違えてしまった上での出来事だとしてもいったいどこに落ち度があろうか? 

 

さて、一年ぶりのきっちょううどん、といっても宮崎滞在の折にはいつも利用させてもらっているので、いちげんさんのように扱われては困るのである。

そのためにはいかにも「通」のように振舞わなければならない。私は暖簾をくぐると一直線にカウンターを目指し、メニューも見ずに淀みなく注文した。

 

「ごぼう天うどんとサラダ巻き!」、「はい、ごぼ天うどんとサラダ巻きね」とおばちゃんが答えた。

 

よし、上出来だ。

 

あとは、辛すぎるからまるで耳かきのような小さなスプーンに“一杯から”と書いてある青唐辛子のペーストを男らしく二杯入れれば完璧だ、と思ったその時、私の目に「レタス巻き」というメニューが飛び込んできた。

 

し、しまった!サラダ巻きでなくレタス巻きであった!気負いすぎて初歩的なミスを犯してしまった。

 

おばちゃんは宮崎の誇る名物である「レタス巻き」をいかにも軽々しい響きである「サラダ巻き」と言われた屈辱を何事もなかったように水に流し、私のようなエセ常連をここのうどんのスープのように温かい気持ちで受け入れてくれていたのであった。

 

私の頬に大粒の涙が伝っていよいよそれが床にまで達した頃にごぼう天うどんとレタス巻きが到着した。

昔は毎回うどんを二杯食べていたけどここ数年はこれでお腹がいっぱいである。

 

これでもかというぐらいパンチの効いたアゴと昆布の出汁に、泥酔したスナックのママのようにまったくコシのないうどんの懐かしいハーモニーが心に沁みた。

今夜はリコーダー奏者の辺保さんがFBにアップしていた丸万本店に参戦してみよう。